私の住まいは、関東平野の北部なので、遠方の景色を遮るような小高い台地などはありません。
広々とした平地が広がり、ローカル線が走り、市街を抜ければ、すぐに田んぼの光景が広がります。
しかし近年田園風景は『開発』という名のもとにあっという間に破壊されています。
車でしか行けないような場所にショッピングモールが建ち、車を所有していなければ住めないような場所に無秩序に新興住宅街が出没し、無機質な巨大な物流倉庫があちらこちらに出現し、道路も地割れのように整備されています。
なので、車中から雄大な富士山を見つければ、すぐに様々な建物や電線等に遮られてしまいます。
歴史を振り返れば、関東平野は何もない広大な平地だったはず。
そこでは、四方八方いつ氾濫するか分からない河川に囲まれた生活なのだから『無事でありますように』と月や太陽そして彼方の富士山へ自然と祈りを捧げたであろうと想像します。
そして今と違って遮るものもなく、遠く彼方にそびえ立つ富士山はどんなに美しかったであろう、と思います。
『開発』とは日本人の日常から富士山を消すようにも思えます。
これからも富士山に憧憬を抱く日本人が絶えませんように。
byくろもじ