どんなに素晴らしい武道の修行が出来る環境に恵まれたとしてもやはり学ぶのは肉体であり肉体の脳である以上は邪な修行者が生まれてしまうのは絶対に避けられないようです。
武道家として一目置かれる技術を得たとしてもそれに伴い心が成長しているかどうかは外から見ても分かりません。そんな教訓と自身への戒めを込めて身内の恥を晒さして頂きました。師の受け売りですが
『武道は技術を教えることは出来ても心を教えることは出来ない』
『武道は人生道』
と言う言葉があります。自身の身の丈を超えた大きな力を得てしまうとそれを制御する為にその力に見合った心を同時に育んでいかないとたやすく道を踏み外してしまいます。そう言った含蓄を含んだ言葉と私は理解しています。
下の言葉は受け売りでは無く私の経験から学んだ言葉です(オリジナルだと思います)。
『修行者は慌てず、比べず、助け合い、自分の速度で歩むべし』
なんか交通標語みたいですね(笑)
私が武道を始めて長らく自分が強くなったという実感が持てませんでした(今もさしてありませんが)。勿論、日々のスパーリングや試合や大会に参加して勝った負けたは何十回、何百回も繰り返しているのですが自分の武道家としての成長を測る指標としては希薄なようです。兄弟子から「ゆたんぽさんの左ジャブのタイミングは分かりにくい上にパンチが重いので怖い」などと褒めてもらっても、嬉しいのですが「ふーん そうなんだ」くらいです。「ゆたんぽさんはゴングが鳴った瞬間にスイッチが入って人格が豹変する」に至っては褒められているのかどうかも怪しいものです。
今日お話するのはそんな私が武道で強くなれたと初めて実感出来たという出来事のお話です。
ただこのお話は悪党五人組に追われて逃げて来た町娘を背中に隠まって相手の攻撃を巧みにかわして怪我を負わせず「覚えてやがれ!」の捨て台詞を残して逃げ出す悪党達を見ていたという話ではありませんのであしからず。
武勇伝と言うよりも笑い話として楽な気分で聞いてください。実はこの話は比較的最近、仕事上で起きた事件なのですがある時、私が社長に債権の回収を命じられました。「面倒くさい仕事はいつも丸投げなんだよな」と思いつつも一任するという話だったので面白そうなので受けました。
うちの会社はサービス業ですが回収業務内容の詳細を話してしまうと業態がバレてしまいますのでその辺はボカシます。簡単に言うと銀行の貸金庫のようなものを想像してください。お客に貸金庫の使用権を契約購入してもらい品物を預かりその管理料を年払いで個々のお客の契約開始月に徴収するというのですがこの管理料が余りにも安く設定してしまった為に契約料と管理料を合わせて値上げすることになったのです。
勿論、もう貸金庫を使用しているお客からは契約料はもらえませんが年間管理料は値上げした新しい料金をもらうことになります。事前の通告無しでいきなり値上げということになれば大クレームになります。実は2年前から値上げの話は決定していて事前の準備は進めていました。既存の契約客は値上に際して1年の猶予期間を与えました。
「値上げをします金額は何円です、ついては今回の更新は旧価格ですが来年度から値上げした新価格になります。契約の継続を希望する場合は新価格でお願いします。新価格が了承出来ない場合は解約でお願いします」みたいな内容を手紙を全ての契約客に送りました。
まあ殆どのお客は何の問題もなく終わりましたが何件かは継続か解約か意思表示がないまま管理料が発生しているお客がいました。その債権回収が私の仕事だったのです。その回収も程なく進み最後の一件になりました。いよいよラスボスの登場です。
このラスボス、実はいい年こいたオヤジなのですが最後にしたのには理由があります。私が債権回収の責任者で動き出す何日か前に値上げに納得出来ないと言って会社に乗り込んで来たのです。他のお客様がいる前でかなり大きな声を出して対応した社員を恫喝したらしいのです。(私はその場にいませんでした)その話が社長の耳に入り晴れて債権回収担当に就任したというのが事の始まりなのでした。
もう私は戦う気、満々です。相手がどう出て来ようが完膚無きまでに叩き潰せる様に事前の情報収集、準備は万端です。武道においてはいつも最悪の状況を想定して相手がどの様な戦法、戦術を用いても対応できるように準備するのことが勝利への道です。戦いは時の運と言う場合もありえますが運に頼なければならないような戦いはそもそもするべきではありません。戦いは事前の準備いかんで8割方決しているのです。
さあ開戦です。
電話をします。オヤジが外出中のようでオヤジのヨメが出ます。先日、来店してくれた際に充分な対応ができなかったことの非礼を詫び今までの経緯を最初から説明して結論を出して欲しいと話します。30分程したらオヤジが帰ってくるので連絡させますとのことでした。想定していたよりもまともな受け答えができるヨメで拍子抜けしましたが、まあ喧嘩しないで解決出来ればこちらも無駄なエネルギーを使わずに済みます。丁度30分くらい経ってオヤジから電話が来ました。ヨメに話したことをもう一度繰り返して説明します。
「値上げは認められない!」オヤジが言います。
私「値上げのご説明が書かれたお手紙は御覧頂けましたか?」オヤジ「見た!」私「ではどうしてご納得頂けないでしょうか?」オヤジ「◯◯という社員が無料でいいと言った!」
このオヤジが言っているのはもう既に退社した社員なのです。そうなんです実はこのオヤジ5年以上も貸金庫を利用しながら契約金はおろか毎年の管理料も1円も払っていなかったのです、お客でもなんでもなかったのです、ホントに只のオヤジでした。しかしこう主張してくるのは想定内でした。まだ冷静に話しを続けます。
私「◯◯という社員はもう在籍しておりませんが無料という話しはしておりません!当時もし同じ話を◯◯がしていたとしたらお客様と同じような申し出をされるお客様がいるはずです。他のお客様は全てご納得されて新価格のご契約に移行しております。だだもし◯◯がお客様のご契約の際に充分なご説明がなされていなかったとすれば当社の落ち度です。つきましては契約時に遡って契約金及びその後の年管理料の債権を放棄させて頂きます。お客様には新価格に移行後の今後の管理料の御負担だけお願い致します。いかがでしょうか?」
オヤジ「認められん!」私「では解約ということでお預かりしているものをお返しするということでよろしいでしょうか?」オヤジ「ダメだ!」私「困りましたね。では規約に基づいてお預かりしているものを廃棄させて頂きますが?」オヤジ「オメエ社長か?」私「いいえ違います。」オヤジ「オメエじゃ話しにならん!社長出せ!」
これも想定内の上に絵に描いたような展開です。まあこれで弱腰の社長を引っ張り出しても面白かったのですが私の邪魔になるだけですので私が続けます。
私「この件に関しては私が社長に一任されております。勿論、業務上の報告に関しては社長にしますが私が決定したことがこの会社の方針で決定事項になります。」この頃になるとオヤジも語気を荒げてがなり立てています。もう堂々巡りで頃合いかなと思い私が参戦します。
私「テメーふざけんなヨ!さっきから大人しく聞いててれば! *****(他のお客様がいるのに店先で怒鳴った事とか)*****(1円も今まで払っていないのに他のお客様よりデカイ態度とか)*****(自分も商売してる癖に無理な要求を通そうとしているとか)****** わかったか?この野郎!」
と今まで生まれてこの方出したことのない声を腹の底から出して怒鳴りました。でも物凄く怒っているようでどこか冷静に自分を見ているんですよね。だから怒鳴っていても喋っている内容は理路整然としてるんですよ。戦いは感情的になって我を忘れたら負けです。嗚呼!武道家だなぁー 口喧嘩だけど(笑)
結果、小心者のオヤジその後も小さな嫌がらせをチョコチョコしては来ましたがもう勝敗は決していたし嫌がらせの内容も私の想像を超えるものはありません。その都度叩き潰してやりました。当然、金を払うつもりもなくごね得を狙っていたオヤジですから預かり品を返して出禁にして終わりです。
ただどんな面をしているのか見て見たかったので預かり品を引き取りに来た時に立会いました。また難癖付けてきたら今度は面と向かってビビらす為に
普通の痩せこけた頭の薄いオッサンでした。黙って品物を受け取ってそそくさと帰って行きました。まあこちらは腕組みして仁王立ちで睨み付けていましたけどね。
*あくまで礼を逸した者に対する対応です。反応には個人差があります。
byゆたんぽ
武術は、身を守るのと相手を倒す技術です。人類の歴史は戦争の繰り返しでもありますので、人を殺すための技術は、心が付いてゆかなかければもろ刃の剣ですね。
ゆたんぽさんのオリジナル標語は、霊的修行者にも通じると思います。
どこにでも面倒くさいお客はいるもんですね。そう言った輩には、きっと未発達霊魂が後押ししているように思えます。
そのオヤジは、霊的修行者でもあるゆたんぽさんの、幽的な圧にも負けたのかもしれませんね。
ゆたんぽさん、説明上手&ケンカ上手で凄いです!
私なんて事務連絡だけでもいつも四苦八苦ですが(;´Д`)
自分の速度で頑張るのが大事ですよね。
格闘技は体格などに恵まれている人の方がやはり有利になるでしょうが、
霊的トレーニングには体つき、体力、年齢、性別など、肉体的な諸条件は関係ありません。高級な存在を求める気持ちが強いか、弱いか。それが霊的成長に一番大切な気持ちです。
競争社会で一般の人とやり合う時は、こっちも相手に合わせないと負けますからね~^^;
格闘技でも習って「強い」って思わせておくだけでも相手の態度が変わるんですよね(-.-;)
僕も何か習っておきたいです(苦笑)